教育方法や方針というのは、親によって、地域によって、宗教によって、また国によって異なります。これから未来を作っていく子供に対する大人の願いは大きい中、その方針にすべての子供が適応できるというわけではなく、また社会自体もものすごい勢いで変化を遂げています。
私が子供の頃は、勉強、受験、資格、大学、大企業に就職など、競争するという環境はいつも自分も周りにあり、それが当たり前だと思っていました。ところが、ある時から「ゆとり教育」が導入され、その世代と一緒に生きていくことになった現在、価値観の違いに遭遇することがよくあります。今回は、オーストラリアの教育方針を事例に、競争教育、あるいは競争しない教育の双方がもたらす長所について、ご紹介してきます。
競争教育の良さ
仲間と切磋琢磨していくことは、人間社会において非常に大切なスキルです。自分が勝利を手に入れるために、正しい判断と十分な準備が必要となります。スポーツの試合、ボードゲーム(将棋、オセロ、チェス、トランプなど)、テストでさえも、子供の決断力や戦略方法(いかにして勝つか)、適切なスケジューリング能力(練習量や勉強量、生活のリズム、体調管理など)を発達させる為に、非常に効果的な日々の訓練なのです。
こういったスキルは、子供が将来社会に出て、さらに様々なバックグラウンドを持つ広範囲の年齢層と接していく中で、仕事上あるいは日常生活で競争することになった際、必ず役に立つスキルです。何よりも、勝利は自分自身に達成感と自信を与えてくれます。また勝利を手に入れる為に、相手に手の内を見せないこと、つまり物事を慎重に用心深く進めることも学びます。
競争しない教育の良さ
日本のゆとり教育とは少し違いますが、人と共存協力していく教育方針というのがオーストラリアにはあります。これは単一民族、単一言語の日本とは異なり、様々なバックグラウンドを持つ人間が住む国ならではの、教育に対する考えです。
この教育は子供に社会性を学ぶ機会を提供していくものです。共存協力とは、お互い助け合い、尊敬し合う関係を構築することです。この教育が必要な背景には、人脈作りの構築が年々スキルとして求められてきていることがあります。そのためには二つのスキルが必要とされます。一言でいうと、聞くことと、話すことです。
「聞く」スキルというのは、人の話を良く聞き、必要な情報を入手すること、相手の求めていることを引き出すこと、です。これに対し、「話す」スキルが必要になります。これはただ長々とおしゃべりをすることではありません。自分の考え、気持ちを的確に相手に伝えるスキルです。このスキルを向上させる為に、最も効果的なディベーティング(討論)は、オーストラリアのみならず欧米各国、中国でも導入されています。
ディベーティングは一見競争に見えますが、これはあくまでも「聞く」「話す」という能力に加え、自分の正当性を主張する能力を高める為の方法の一つにしか過ぎません。相手と共存し受け入れる為には、自分を知り、自分を守り、正当化する必要があります。競争しないというのは、決して相手の意見に合わせることではないからです。
まとめ
- 競争教育の長所は、子供の決断力や適切なスケジューリング能力を発達させる為に、非常に効果的な日々の訓練
- 競争しない教育の良さは、社会性というスキルを向上させることにある。そのためには必要なことを引き出す為の「聞く」能力と的確に自分の考えを伝える「話す」能力が不可欠である
一人一人の個性に合わせた教育は、とても大切なことです。その一方で、日本には1億人以上、この地球には70億人という人間が住んでいて、自分の世界を守りつつ、彼らと共存していく必要があります。日本とは違うオーストラリアの教育方法も参考に、あなたの、あるいは周りにいる子供たちに導入してみてはいかがでしょうか?
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