「EVって本当にお得?」燃料費が抑えられ、静かで快適な環境に優しい乗り物。一方で航続距離や充電インフラ、寒さに弱いバッテリーの寿命など、不安が頭をよぎる人も多いはず。今回は、ガソリン車との比較や、知らないと損するEVのメリット・デメリット、購入前に必ず確認すべきポイントなど、EV車の本当の姿をわかりやすく解説していきます。
EV(電気自動車)のメリットとデメリット
EVのメリット
①環境への貢献
EVは走行時に排気ガスを出さないため、大気汚染の改善に直結します。特に都市部で深刻な問題となるPM2.5や騒音も軽減できる点は大きいです。現在の世界的な「脱炭素社会」の流れにおいて、EVはカーボンニュートラル達成の切り札と位置づけられています。特に欧州では「2035年以降のガソリン車販売禁止」といった政策が進んでおり、EVの普及は環境だけでなく国際的な産業競争力にも関わっています。
②ランニングコストの低さ
日本での平均電気代を基準にすると、EVは1kmあたり約3〜5円で走行可能とされています。一方、ガソリン車は1kmあたり12〜15円程度。年間1万km走ると仮定すると、単純計算でガソリン車より数万円の節約が可能となります。さらに、エンジンオイルやマフラーといった部品が不要なため、長期的な維持費も抑えられます。
③車載電源としての活用
日本は地震や台風など自然災害が多い国です。EVの大容量バッテリーは、災害時に自宅の冷蔵庫や照明、通信機器を数日間稼働させる電源ともなります。実際に、東日本大震災以降、非常用電源としてEVを導入する家庭や自治体が増えています。またキャンプや屋外イベントでも、蓄電池代わりに家庭用コンセント感覚で電気を利用できるのは大きな強み。
④税制優遇・補助金制度
国や自治体はEV普及を後押ししており、車両購入時の補助金は数十万円規模になる場合もあります。自動車重量税・取得税の免除や、自治体ごとの駐車場優遇策など、地域によって追加メリットも存在します。これらを上手に活用すれば、初期投資の負担を大幅に減らすことが可能です。
⑤静粛性と加速性能
EVは走行音が非常に静かで、長時間の運転でも疲労が少ないです。加えて、モーターはアクセルを踏んだ瞬間に最大トルクを発揮するため、信号待ちからの発進や高速道路の追い越しで「スムーズかつ力強い加速」が可能。特に都市部でのストップ&ゴーにおいて、その快適さはガソリン車より優れています。
EVのデメリット
①雪国や寒冷地での性能低下
EV車に搭載されているリチウムイオン電池は、性質上寒さ(温度変化)に弱いです。氷点下では化学反応が鈍り、バッテリー効率が低下します。その結果、航続距離は2〜3割短縮される場合が。さらに、冬場の寒さが厳しい地方では、暖房に電力を消費するため、実際の走行可能距離はカタログ値より大きく下回る可能性が高いです。この為、北海道や東北地方のユーザーからは「冬場のEV利用は不安」という声が多いです。場所によっては雪で道幅が狭く、一台の立ち往生が大変な交通渋滞にもなる上、マイナスを下回る寒さでは命の危険にも繋がるからです。
②充電インフラの不足と充電時間
都市部では急速充電器が整備されつつありますが、地方では依然として不足気味。さらに、急速充電でも30分で80%程度までしか充電できず、ガソリン補給の数分に比べれば時間的負担は大きい。旅行や長距離ドライブでは、充電計画を立てる必要があり、地方の山岳地帯へ行きたくても、「気軽に遠出しづらい」という制約が残ります。日本は75%が山を占める、山から成る島国です。
③バッテリー劣化と廃棄問題
EVの寿命を左右するのはバッテリー。充放電を繰り返すことで容量は徐々に減り、10年後には当初の7〜8割程度まで低下します。バッテリー交換費用は数十万円以上と高額であり、中古市場での評価も下がりやすいです。また、廃棄されるバッテリーは環境負荷の問題が大きく、資源リサイクルの仕組みが追いついていない点が、大きな課題となっています。
④火災リスクと安全性
EV車に搭載されているリチウムイオン電池は「熱暴走」と呼ばれる現象を起こすと発火する危険があります。リチウム電池に関する事故は、航空機での発火事件(リチウムバッテリー搭載の充電器が発火した)というニュースでも耳にしますね。EV車でも衝突事故や浸水、過充電による事故例も報告されており、完全な安全性は確立されていないように見受けます。メーカー各社は冷却システムや安全機構を強化していますが、社会的にはまだリスクへの不安が根強いのが実態です。
⑤車両価格の高さ
EVはバッテリーのコストが価格を押し上げており、同サイズのガソリン車と比較すると数十万円〜100万円以上高めです。補助金を受けても「初期費用の高さ」が購入のハードルとなっています。
ガソリン車とEV車の比較
①購入コストと維持コスト
- EV車
初期購入費用は高めですが、補助金・減税で実質負担を軽減可能。電気代はガソリンより安く、メンテナンス費用も抑えられる。年間数万円の維持費削減が期待できます。 - ガソリン車
購入価格は手頃で、中古車市場も豊富。給油は短時間で済むが、燃料費の高騰が家計を圧迫。エンジンオイル交換や部品交換など維持費もかかります。
②航続距離
- EV車
最新モデルで300〜500km。テスラや一部高級車は600km超もあるが、寒冷地やエアコン使用時は実距離が2〜3割短縮される。長距離移動には充電計画が必須。 - ガソリン車
満タンで600〜800kmが一般的。高速道路のサービスエリアや街中で簡単に給油でき、利便性は非常に高い。
③使用可能期間(耐久性)
- EV車
モーターや車体の寿命は長いが、バッテリーが8〜10年で劣化。交換は高額で、長期利用を考えると課題。 - ガソリン車
エンジン部品の摩耗はあるが、修理・交換で延命可能。メンテナンス次第で20年以上走る例も多い。
④クルマを超えた価値(付加価値)
- EV車
非常用電源や再生可能エネルギーとの連携により、車を超えて「家庭のエネルギー基盤」として活躍可能。 - ガソリン車
既存インフラに完全対応しており、地方でも安心して利用可能。長距離・寒冷地に強い
EV購入を決断する際のポイント
EVを購入するかどうかを決める際には、単に「環境に良さそう」「補助金がある」といった表面的な要素だけではなく、日常生活や将来のライフプランに直結する複数の視点から判断する必要があります。ここでは代表的な判断基準を整理していきます。
①走行距離と利用目的の確認
- 都市部の短距離移動が中心か?
毎日の通勤や買い物など、1日の走行距離が50km前後に収まる場合、EVのメリットは大きいです。充電も夜間に自宅で済ませられるため、ストレスなく利用できます。 - 長距離ドライブや出張が多いか?
片道300kmを超える移動が頻繁にある場合、EVでは充電回数が増えることに。こうしたケースでは、ハイブリッド車やガソリン車が安心できる選択肢となります。
②充電環境の整備状況
- 自宅充電の有無
戸建て住宅であれば、自宅ガレージに充電設備を設置するのが理想的。集合住宅の場合は管理組合やオーナーの承認が必要で、設置が難しい場合も多い。自宅充電が可能かどうかで、EVの利便性は大きく変わる。 - 外出先での充電インフラ
自宅に充電設備がなくても、近隣に急速充電器や商業施設内の普通充電器が充実していれば、日常利用に支障は少ない。ただし地方ではインフラが整っていない地域もあるため、地域性を考慮することが不可欠。
③補助金や税制優遇の有効活用
EVはガソリン車より車両価格が高いが、国や自治体の補助金を組み合わせれば実質的な購入価格は大幅に下がります。また、取得税や重量税の減免、自動車税の優遇といった制度もあります。購入前に最新の制度を確認し、試算してみてください。
④災害対策・ライフスタイルとの相性
- 防災意識が高い家庭
停電が発生しても、EVがあれば家庭の電気を数日間まかなえる。非常用電源としての価値は、災害の多い日本では極めて大きい。 - アウトドア・レジャー用途
キャンプや車中泊で、蓄電池代わりに使用して調理器具や照明、冷蔵庫などを稼働させられるのもEVならではの強み。単なる移動手段を超えたライフスタイルの一部となり得る。
⑤バッテリー寿命とリセールバリュー
EVを長期利用する際の最大の懸念はバッテリーの寿命です。8〜10年後に交換が必要になる可能性があり、その費用は数十万円に及びます。購入時点で「どのくらいの期間乗るのか」を想定することが重要。
⑥技術進化のスピード
EV業界は日進月歩であり、数年後には航続距離や充電時間が飛躍的に改善された新型車が登場する可能性が高いです。現時点で購入する場合、「最新モデルを長く乗る」よりも「短期間で買い替える」という選択肢も現実的かもしれません。特にリース契約やカーシェアを活用すれば、リスクを抑えながらEVを体験できます。
日本で人気のEV車5選(売上・販売台数で上位のモデル)
順位 |
モデル |
最近の販売台数・シェアなどの状況 |
1. 日産サクラ(Nissan Sakura) |
2024年度(2024年4月~2025年3月)の国内軽EV販売で20,832台を販売し、3年連続で国内EV販売台数No.1。 また、全EV販売のうちかなりの割合を占めている。 |
手頃な価格、軽自動車ならではのサイズ感と運転性。日常使い(通勤・買い物などの近距離)に十分な性能。軽EVとして税金・補助金制度のメリットが大きい。ブランドとして日産の信頼感。 |
2. 日産リーフ(Nissan Leaf) |
日本で古くからEVとして定番モデル。直近のデータでは、EV販売でベスト5に常に入っている。 |
歴史があり、信頼性とメンテナンス実績が豊富。普通乗用車クラスのEVとしての認知度が高い。航続距離や充電ネットワークとの親和性も高く、EV初心者にも選ばれやすい。 |
3. 三菱eKクロス EV |
国内EV販売で上位に入る軽乗用EVモデル。直近ランキングで3位などの実績。 |
軽自動車EVとして手頃な価格帯・維持コストの低さ。取り回しが良く、都市部ユーザーや軽車両サイズを求めるユーザーにマッチする。三菱・日産共同開発で信頼性も一定。 |
4. 日産アリア |
普通乗用EVクラスで上位。国内EV販売ランキングで4位になることが多い。 |
SUV/クロスオーバータイプでサイズ・使い勝手が良く、見た目・快適性も高い評価。航続距離や高性能オプションも充実しており、価格とのバランスも取れている。ブランド力と先進装備も後押し。 |
5. テスラ モデル3 (Tesla Model 3) |
輸入車として人気がある。国内EV販売ランキングでも上位に入る。 |
テスラならではのブランド力、高性能・高航続距離、高速充電ネットワークとの連携。先進的なソフトウェア/自動運転支援機能も強み。輸入車でも注目度が高い。 |
まとめ
EVは今、社会的な関心と期待を集める一方で、多くの課題を抱えています。
- メリット:環境への貢献、維持費の低さ、災害時の電源活用、税制優遇、静かな走行性。
- デメリット:寒冷地での航続距離低下(寒さに弱い)、充電インフラ不足、バッテリー劣化・廃棄問題、火災リスク、価格の高さ。
ガソリン車との比較では、利便性や航続距離ではまだガソリン車が優位ですが、環境負荷低減や新しいエネルギー利用の観点ではEVが勝ります。「どちらが絶対的に優れているか」ではなく、ユーザーの生活環境や利用スタイルによって最適解が異なるのが現状です。日本は地震や台風といった災害が多い国であり、「走る電源」としてのEVの役割はますます重要になると思われます。同時に、充電インフラやバッテリーリサイクルの体制が整えば、EVの普及は一層加速するに違いありません。
購入を検討する際には、走行環境、充電設備、補助金制度、自分のライフスタイルを冷静に照らし合わせ、長期的な視点で判断することが求められます。今後の技術革新と社会インフラの進化によって、EVは単なる「車」から「生活インフラの一部」へと進化し、私たちの暮らしにより深く根付いていくはずです。今後の動きにも注目していきたいですね。