アイルランド経済の特徴とは?その成長理由

政治・経済
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近年、ビジネスや経済の世界で注目されている国の一つに、アイルランドがあります。隣国のイギリスと熾烈な争いを繰り広げ、飢饉といった困難にもさらされた厳しい歴史を持ちながら、21世紀以降、着実に経済成長を遂げたアイルランド。大きな飛躍を遂げたその理由とは?今回はビジネス視点でのアイルランドの経済特徴と魅力について、みていきたいと思います。

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アイルランドの経済の特徴

イギリスの隣に位置する島国、アイルランド。長いイギリスからの支配から逃れ独立したものの、EU諸国内において貧しい国という位置づけでいた国は、近年大きな成長を遂げ、2021年時点で国民一人当たりのGDPは 100,172ドルで、世界第4位に。アイルランドは近年、医薬品業界や医療機器といったライフサイエンス業界、半導体を中心とするIT業界、そして金融業界を中心に、世界中から注目が集まっています。

アイルランド経済成長の背景・理由

アイルランドが経済成長を遂げた背景はいくつか考えられますが、EU圏内において最低水準の法人税率(12.5%;ただし、今後変動の可能性あり)が設定されていることが魅力の一つとなっています。また、英語圏であることから、EUを脱退したイギリスに変わるヨーロッパの移転先として、注目されているという背景もあります。

アイルランドはもともと農業国でしたが、1990年代から外資系企業の誘致を開始し、2010年の金融危機で一旦勢いが落ちたものの、見事に経済復活。2017年以降は、中国やインドを凌ぐ経済成長を遂げて、現在に至っています。過去何世紀にも渡り、隣国イギリスからの支配・弾圧に苦しみ、食料飢饉に苦しんで国を離れ、世界中に飛び散った大勢のアイルランド人。アイランドの国としての政策が優れていることはさることながら、彼らの人脈と粘り強さが土台となり、祖国アイルランドへの経済成長に繋がった、という見解もあるようです。

ライフサイエンス業界が注目している背景と理由

理由の一つに人材があります。アイルランドは、世界でも数少ない医薬品産業のセンター・オブ・エクセレンス(COE)を持つ国の一つで、専門教育を受けた人材が多くいます。

2つ目が、実践的な研究機関の存在。アイルランドは、2011年にNIBRT (The National Institute for Bioprocessing Research and Training)をダブリンに設立しました。ここは国立バイオプロセス研究機関で、業界有数の頭脳が集結している、と言われています。日本で言う産学官連携をより効率的にグローバル化にした組織で、国と大学と企業が一体となって、医薬品の開発発展に協力したり、支援・誘致を行っておりますが、特徴的なのは、各企業の壁を超えて協力し合う点です。

こういった風通しの良い、双方の医薬品開発技術を高めながら経済を発展させる仕組みが、アイルランドにはあり、2021年の製品輸出額1652億ユーロのうち、38%(626億ユーロ)が医薬品を中心とした製品で、世界有数の医薬品輸出国となっています。

【参照】Goods Exports and Imports December 2021 – CSO

韓国や中国を始め、医薬品産業に力を入れている諸外国は多く、投資家への働きかけは今後も熾烈を極めていくことが予想されますが、現在のポジティブな流れを今後も維持していくことができるのかが、アイルランド側の課題。医薬品業界が次世代治療と期待される細胞・遺伝子治療に関心が高まる中、いかに海外の投資家からの注目を集め、資金と資金を集約することができるかが、ポイントになりそうです。

日本がアイルランドとビジネスをするメリット

医薬品業界

日本をリードする医薬品企業の中には、既にアイルランドに注目している企業もいます。まず記憶に新しいのが、武田薬品工業のShire(シャイヤ)買収。この他、アステラス製薬も1990年代に入る前からアイルランドに工場を建設するなど、巨額な設備投資をし、戦略的に進出しています。

医薬品のみならず、検査薬や診断薬など、日本で原薬や半製品を作り、アイルランドで最終工程に仕上げるなど、双方の技術と強みを活かす形でビジネス提携している化学会社もあります。ご存知の通り、日本の化学産業には長い歴史があり、そのレベルは世界トップクラス。化学会社の製造過程で生産される副産物は、一部医薬品原料となり、医薬品製造には欠かせないものとなっています。

医療機器業界

MDR(Medical Device Regulation)が2021年から施行となり、様々な要求項目が増えた医療機器業界。とはいえ、医薬品に比べ、医療機器の臨床試験ははるかに短期間で、審査も厳格ではない分、開発サイクルが短縮されることでより少ない資本で成果を上げることができる、と言われています。

治療系医療機器メーカーの主要企業は、アイルランドの「メドトロニック」やアメリカの「ジョンソンエンドジョンソン」が有名ですが、国内の主要メーカーは「オリンパス(内視鏡など)」「テルモ(カテーテル等)」「富士フィルム(内視鏡・超音波)」「ニプロ(ディスポーザル製品)」などが挙げられます。ニプロは2013年にグッドマン・メディカル・アイルランドを傘下に収め、心臓循環器系製品を注力。医療機器業界においても、日本とアイルランドを繋ぐビジネスは今後期待できそうです。

まとめ

  • アイルランドは法人税が低い英語圏の国という特徴を活かし、ヨーロッパの経済拠点として注目されている。
  • アイルランドは医薬品産業の知識や技術をもった人材が豊富。
  • 国・大学・企業それぞれが持つ強みを集結させる組織(NIBRT)がある。

コロナ禍において、サプライチェーンの問題や原料調達から製品化までの不安定要素が浮き彫りになった医薬品業界。アイルランドは先手を打って体制強化に努めてきてきました。法人税の低さや英語圏である好条件のみならず、人材育成、政策、資金といった経済循環に必要な環境作りに優れている点が、世界を牽引するグローバル企業から注目されている理由かもしれません。日本とアイルランド、今後どのように成長していくのか、注目していきたいですね。

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