メンタルと向き合う現代アーティストたち―ジャスティン・ビーバーが示す姿―

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はじめに:SNSが変えたアーティストの生き方

かつてのアーティストは、テレビや雑誌といったメディアを通じて、世間とつながっていました。ファンが知るのは「編集されたスター像」であり、本人のプライベートや弱さは、ある程度守られていたのです。批判や評価も雑誌や新聞などを介して届くため、即時性はなく心理的負担は限定的でした。しかしSNSが普及した現在、アーティストは世界中の人々と常時接続されています。

InstagramやX、TikTokでの投稿が瞬時に拡散され、賛辞も批判もダイレクトに本人に届く現在。評価が「いいね」や再生回数といった数値で示されるため、自尊心がアルゴリズムに左右されやすい傾向があります。こうした時代背景の中で、ジャスティン・ビーバーは「メンタルと向き合うポップスター」として注目されてきました。10代で世界的スターとなり、SNS時代の波に翻弄されながらも、病や中傷を経て「新しいアーティスト像」を提示しようとしている彼の姿を、分析していきたいと思います。

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SNSと名声の光と影

ジャスティン・ビーバーがYouTubeを通じて発掘され、瞬く間に世界的スターへと駆け上がったのは、SNS時代を象徴する出来事でした。SNSは彼の才能を一気に広める武器となった一方で、強烈な副作用も伴いました。まだ思春期だった彼は、世界中から絶え間なく届くファンの声援と同時に、辛辣な批判や中傷にも晒されました。彼自身、「SNSで見た批判的なコメントに心をえぐられ、自分の存在意義を疑った」と話しています。

SNSが登場する前の従来のスター達が、マネージャーや所属事務所・所属会社を介して世間とつながっていたのに対し、彼はダイレクトに世界中の声を浴びる最初の世代だったのです。SNSが生み出した新しい時代のスター像は、まさに「光と影の両面」を象徴しています。

病とメンタルの試練

SNSによる精神的ストレスに加え、彼を襲ったのが健康問題でした。2022年、ジャスティンは「ラムゼイ・ハント症候群」という顔面麻痺を引き起こす病を公表し、ツアーの中断を余儀なくされました。この病気は身体的にも大きな打撃でしたが、それ以上にメンタルに深刻な影響を及ぼしました。「自分はもう以前のように歌えないのではないか」という不安と、数千万人のファンを待たせている罪悪感。アーティストとしての存在意義そのものが揺らいだのです。

さらに、過去から続くうつや不安障害の症状も、彼を苦しめていました。若くして名声を得た彼にとって、ステージに立つこと自体が、精神的負担となる瞬間もあったのです。しかし、彼は休養を決断し、治療やカウンセリングを受けながら回復に努めました。この「立ち止まる勇気」こそ、従来のスター像にはなかった新しい姿勢といえるでしょう。

ジャスティンが示す“新しいアーティスト像”

活動休止を経て復帰したジャスティン・ビーバーは、かつての「常にトップで輝き続けるスター」ではなくなりました。その代わりに、彼が語り始めたのは「人としてのバランス」の大切さです。インタビューやSNSで彼は、「音楽は人生の全てではない」「自分にとって最も大切なのは健康と家族だ」と繰り返し話しています。また、ファンに対しても「弱さを隠さなくていい」「完璧じゃなくてもいい」と発信し、ポップスターでありながら人間らしい一面をさらけ出すことを選びました。

この姿勢は、SNS時代に悩む若者に強い共感を呼んでいます。SNSの中で比較や評価に苦しむのは、一般人も同じです。そんな時、世界的スターであるジャスティンが「僕も苦しんでいる」「一緒に立ち直ろう」と語ることは、間違いなく大きな励ましになることでしょう。

現在の彼は、無理にSNSを更新するのではなく、「心が安定しているときだけ発信する」というスタンスを取っていると言われています。また、ファンとのつながりをSNS上の交流だけに頼るのではなく、音楽そのものを対話の手段として重視しているということでしょう。アルバム『Justice』では「愛」「癒し」「赦し」をテーマにし、ステージや歌詞を通じてファンへメッセージを届けました。彼にとって音楽は、SNS以上に深く持続的につながる方法となったのです。

メンタルと向き合う勇気が未来を変える

SNSが普及する以前と現在では、アーティストを取り巻く環境は大きく変わりました。今やスターは24時間世界中の視線にさらされ、批判も称賛も瞬時に届きます。その重圧は計り知れません。ジャスティン・ビーバーは、その最前線に立たされ、病とメンタルの試練を経験しました。しかし彼は、その過程で「立ち止まる勇気」「弱さを認める強さ」を身につけ、新しいアーティスト像を示しています。彼の姿は、単なるセレブのゴシップを超えて、現代を生きる私たちへのメッセージとなっています。SNSに疲れた時、批判に心を痛めた時、ジャスティンの言葉は「ありのままでいい」と背中を押してくれることでしょう。

 

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